従兄弟

ところで私には、殆ど会った事のない同い年の従兄弟がいる。
父の弟の息子さんで、仮にTくんとしておく。

聞いた話によると、Tくんと私は現役時代に同じ国立大学を
受験して、仲良く不合格となったらしい。
一浪の末、私は東京の私立大学に進学し、Tくんは県内の
薬科大学に入学した、というところまでは知っていた。


最近、法事で顔を合わせたTくんの父親である叔父さんが、
「今だから話すけど、うちのTと○○さん(私のこと)は
 高三のとき同じ大学を受験して、二人とも落ちたんだよねぇ。
 その後、△△大学を出て、うちの息子は今、××製薬の
 研究所で働いているんだよ」
という話をしていた。



「今だから話すけど?」
なんとなくいい気持ちはしなかった。


別に大学にストレートで入学できなかったことはどうでもいい。
それは私の努力が足りなかっただけのことだから。

当時もぼんやりと感じていたことだが、そこには
「女の子なのに難しい大学/学部を受験して」
というニュアンスが含まれていたような気がするのだ。


顔も見たことないような従兄弟に、いちいちライバル心を
燃やしているほど私はヒマではなかったけれど、もしかすると
その叔父さんの家では「○○ちゃんに負けるな」なんて
会話があったのだろうか。


ま、いいや。
いちいちひっかかっていても仕方ない。
私は私の道を行く。
今も昔も。